とっても嬉しいお便り

色づく福島
 数日前、福島在住のある方から「春のみなも」の読後感を頂きました。(実名は伏します)
 こういう読後感を頂くと、苦労して取材し、幕末福島のことを小説にしてよかったなと、つくづく思います。色んな悔しい思いや、苦心が酬われたと思う瞬間で、作者冥利に尽きます。
先ずはその一部をご紹介致します。
 (前略)「全体として実に壮大な物語で、しかも当時の福島の歴史をしっかり調べられ、巧みな展開で読み手をぐいぐい引き込んでいく筆致に心底感服致しました。
 私も福島っ子で、今は●●先生に師事して郷土史の勉強をさせて頂いていますが、先生の作品の方がはるかに魅力があり、新しい眼が開けました。先日◆◆君と会った折(◆◆さんから拙著を紹介された由)、『私もうなって読ませてもらったよと』感想を述べてきたところでしたが、先生にも『凄い本をお書きになりました、福島の私説維新史ですね』と申し上げたくて、一筆したためた次第でございます。
 これからも想を新たにして、新しい作品をご執筆されることを期待しております。」(後略)

 現在、6作ほどの長編、中編の資料集め、構想、執筆と進めていますが、なかなかうまくいかないことが多いです。特に古文書や書籍だけでは知り得ない話を、郷土史家の方にお聞きすることも大切です。
 実は「春のみなも」の取材に際して、上記の●●先生にお話をお伺いしたい旨を二度ほどお手紙を差し上げたあと、お伺いする日程を確認しようとお電話をしました。その時のやりとりを鮮明に覚えています。
「お手紙を差し上げたものですが、お目にかかってお話をお伺いしたいのですが……」
「福島市史や、私の本に全て書いた通りだ」
「福島市史の全巻、福島叢書など必要と思えるものは、集めて調べ、先生の著書も全て読みましたが、不明なことがあるので直接お目にかかりたいのです」
「全て目を通しているなら、私が教えることはない。第一、小説家などは、ろくに調べもしないでいい加減な嘘を書く」
「城下の人々が日々暮らす当時の様子が、市史にも、叢書にも先生の御本にも書かれていないのでそれを知りたいのですが……」
「いや、私が教えることはない」
 まあ、予想はしていましが、それにしてもけんもほろろな対応でした。きっと虫の居所が悪かったのでしょうが、名のある作家であれば、ここまで虚仮にされなかったと思います。無名作家の取材は大変だと身に染みたものでした。
しかしこの対応によって、私の本気に火が付きました。
 もちろん郷土史家の中にも地道に研究されてる立派な方は沢山おいでです。保原の遠藤俊夫先生という地元史家にお目にかかったことがございます。慶応二年の信達一揆首謀者の一人と思われている菅野八郎の事を色々と尋ねて、最大の疑問をぶつけてみたら、
「それは、私もわがんねえ(わからない)」という回答でした。立派な対応でした。
 郷土史家の方が、調べても尚わからないと云うことであれば、そこから先は小説家の「想像力」を働かせれば良く、「春のみなも」の登場人物、菅野八郎のキャラクターの誕生でした。
 この度頂いたお手紙は、当時の取材の苦労を吹き飛ばしてくれるものでありましたが、小説家として襟を正し、更なる高見を目指して歴史物語を書けという激励と助言を頂いたものと思っております。